大判例

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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)7111号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、しかし右通院治療を必要とする程の重い、むち打症であつたとの点および後遺症につき、本件事故と因果関係がない旨被告側で争うので検討する。

<証拠>によれば、次の事実を認めることができる。本件事故直後の様子は、原告車の後部に数千円の修理費をかければ足りる軽微な事故であり、いわゆる警察の事故扱いになつていなかつた。従つて、原告自身も事故当日から昭和四〇年八月一二日までの三九日間に磯野外科病院へ実日数三日通院しただけであつた。その頃、原告の希望により幸裕自動車株式会社を退職し、東京第三交通へ勤め替えしてタクシーの運転手として稼働するかたわら、売薬その他により素人治療に心掛けていた。そして九カ月後の昭和四一年五月一〇日以降岡田病院へ通院して治療を受けている。同年五月三〇日に所轄の蔵前警察署へ交通事故として本件事故を原告側で届出て、はじめて正式な事故扱とされることとなつた。これを契機として警察の担当官のすすめもあつて、同年六月八日、被告側から金三万円の見舞金を原告に支払い、その余の損害については自賠責保険金三〇万円の範囲ですませる旨の仮示談が成立し、その旨の仮示談書(乙第一〇号証)が取りかわされた。それから同年六月一八日まで岡田病院へ通院し、同年六月二二日以降峡田診療所へ転医し昭和四三年六月二六日まで(内実日数六〇日)の通院をした。その間の昭和四二年七月一日付で強制保険請求手続がとられたけれども、その後、如何なる事情によるものであるかは、判然としないけれども、右請求手続は撤回されたままになつている。

日本赤十字社中央病院の中村季秋医師の鑑定嘱託の結果によれば、受傷当時は別として外傷性神経症(心因性)が主体であり、本件事故と原告の主張する後遺症とは因果関係がない旨の判定をしている。

以上の認定事実によれば、原告の負傷の程度は請求原因第(一)項6の通院治療の限度において本件事故と因果関係があるものと認めるのを相当とする。しかし事故後は全部休業して治療に専念している主張、および後遺症についての主張は、いずれも本件事故と相当因果関係がないものと認めるのを相当とする。

二、被告側は、示談が成立している旨抗弁するけれども、前認定のとおり仮示談にすぎず、その仮示談書(乙第一〇号証)には「本示談書作成後は本証は無効とする」旨明記されていることが認められる。その後本示談が成立した旨の立証がない。また、その後本示談ができる可能性もなかつたことが弁論の全趣旨によつて認められる。従つて右示談の抗弁は、仮示談であつて、本訴請求を排斥せしめるに足りるものとは認め難い。

結局被告らは連帯して原告に対し相当因果関係のある損害を賠償する責任がある。(竜前三郎)

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